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DIARY

2003/10/10(金)


横須賀のドブ板通り・・・

この通りは、いつ行っても独特の雰囲気だ。
なんと表現したらいいのだろう・・・・

終わっている・・・とでも言うべきか?

なぜか、流れているばずの時間が止まっているのだ。

でもここは、最近流行りのノスタルジック系テーマパークのように、
昭和20〜30年代の雰囲気をわざとかもし出している訳ではない。
むしろ逆に、
歩道のタイルや、街灯等、目にとまる部分を、
それこそ“おしゃれで明るい横須賀”にと、
一生懸命演出しようと努力しているかんじだ。

しかし、どんなに街を新しくしようとしたところで、
そこにある店と、そこに住んでいる住人が同じならば、
そしてなによりも、
そこに並んでいる商品が、横須賀であるならば、
いつ行っても、相変わらずのムード。
それが、ドブ板だ。

そいえば、米軍のベースがある街は、なぜかみんなそうだ。
これも一種、戦争の傷跡なのか?


そのドブ板通りの中程に、小さなスカジャン専門店がある。
(まぁもっとも、この街はスカジャン屋だらけなのだが・・・)

二間ほどの店構えのその店。
日にやけた黄色のシートのひさし看板には、

創業1947年
ヨコスカジャンパー専門店
プリンス商会 PRINCE CO.

の黒い文字。

最近はこのあたりのスカジャン屋も、
“ブティック風”に、こざっぱりしてきているのだが、
ここは違う。
ストレートに昔も今も“スカジャン屋”。

「これじゃ、店の中に入れないだろお・・・」というかんじに、
色とりどりのスカジャンが無造作にぶらさがっている入口を
一歩店内に入ると、
突然そこは、竜と虎と鳳凰の動物園に変わる。

あるわあるわ・・・・・スカジャンの海。

ここはスカジャンの店ではなく、
店がスカジャンだ。


その店の中に、大ぶりの一匹の虎がいた・・・


その虎は、獰猛な野生動物特有の目で俺を見ていた。
しかし、けっしてこちらを威嚇しようとなどしていない。
威嚇の咆哮も、戦闘態勢の構えもない。

その虎は、密林の王者の風格とでも言うべき、
落ち着いた、しかし、誰をもを無言で圧倒する力を宿す目で、
ただ俺を見ていた。

しばらく、その虎と向かい合っていた俺。

・・・・というより、

その静かな迫力に押され、
こちらが先に視線をはずした途端、
おそいかかってくるんじゃないかというその目から、
しばらく目をそらせないでいた。


「その虎はね・・・・」
「え?」

店員さんの声が、
俺とその虎との緊張を解いた・・・

「その虎はね、もうその一点かぎりなんですよ。」
「・・・・・・どういう意味なんですか?」
「その虎を縫った職人さん、もういないの。死んじゃったんだよ。もう歳だったからね。」
「・・・・・・」
「だから、もう、その虎を刺繍できる人はこの世には誰もいないんだ。だからそれが最後の一匹。」
「・・・・・・」


店を出た・・・・

そこは、時間の止まった街・・・横須賀ドブ板通り。




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